日記
所ジョージのテレビ番組をたまたま初めて観た。昔からやっている番組で、いまならTwitterでやるような世間話をだらだらするだけという内容だったけれど、彼のまったく肩肘を張らないたたずまいと話し方に妙な癒し効果がありおもしろかった。彼は幸福そうだ。…
そこはたしかに自分の家だけれど、迷宮のように広く、入り組んでいた。様々なものが散らかった物置きのようないくつもの薄暗い部屋、いくつもの階段、光が差し込んで部屋の壁を白く照らすいくつもの窓。小糸はいくつもの廊下をさまよって、その家から出る道…
カラオケが非常に苦手だけれど、それは歌う言葉が自分のものではないからだろう。 おれはこんな詩のようなことを…思ったことはあるかもしれないが、こんな言葉でそれを思ったことはない。これは自分の感覚でも思考でもない、他人の言葉だと感じながら、詩を…
部屋の掃き出し窓から、庭が見える。 借りているアパートは2階の大家の他は住人がおらず、庭は実質自分のスペースであった。 たわむれに球根を植えたり、芝を敷いてみたりするが、それほど熱心には管理していない。 なので雑草がどんどん生えてくる。私はそ…
「誰かに恋をしている人」を今まで実際に一度も見たことがないことにふと気がつく。 文字で、絵で、映像で、音楽で、あらゆる創作で豊かに、人間の普遍的な営みとして恋は語られているから、自分もまた、恋は普遍的なものであり空気のように世間のどこにでも…
眠ることと夢を見ることは今もなお、白い靄のかかった神秘や魔術の側の世界に属している。 『いま』がずっと続くことも、不可逆で劇的な変化が訪れることも、どちらをも恐れている。変化を恐れるのは、その変化はおおむね良いものではないと想像されるからだ…
彗星を見ようと思って川辺に行き、長い梅雨空の隙間の色が水色から黄色、黒い紺色に変わるまで眺めていた。地上の光があまりにも眩しい。グラウンド、モール、ごみ処理場、橋、国道、ヘッドライト。数キロも先にいるはずの自動車のヘッドライトの光がまるで…
深い悲しみ、目の前で失われてゆくものへまだ行かないでほしいと懇願する抑えきれない強い気持ちがあり、それにも関わらず崩れ落ち、秩序を失い、無情に、ある種の力強さをも帯びて無へと帰ってゆくさまを見て、打ちのめされる痛みの向こうに、その人の手の…
まえから強いほうではなかったけど、このごろますます弱くなった気がする。今は缶ビール一本でもうお腹いっぱいという感じ。 呑むというのがどういうことなのか結局わからずにいる。水やコーヒーを飲むというのとは明らかに別の行為としてお酒を「呑む」とい…
クリスマスになにか特別ハッピーな思い出があるわけではない。小さいころは普通に(普通という表現もこのごろは無神経な言いかたと見なされるだろうか)部屋にプラスティックのツリーを飾り、ケーキを切ってもらい、寝ているあいだに枕元に阪急デパートの包…
右に向かって、つまり南から雲が流れ降りてくる。 あれはおそらく雨雲で、午後遅くから雨という予報は当たるだろう。それでも今はまだ陽の光が残り、対岸側の湖面を白く照らしている。 水の匂いをかすかに感じる。木と草、空気の匂いがもっと濃厚にただよっ…
子どもを抱っこしたいという欲求がわりといつもある。 赤ちゃんではなく、もう靴をはいてふつうに歩いて話せる子どもを、遊び疲れたのか拗ねているのか、お父さんが抱っこして歩いているのをときどき街で見かけて、いいなあと思う。なぜだか分からない。 小…
年長者が話し始める「そもそも…」すると聞き手の若者はすかさずそれをさえぎってしまう「また始まった」「その話、長くなりそうですか?」 若者と年長者という関係に限らず、他人の長い話を聞きたがらない態度というのは広く共感され、定番のコメディとして…
つまり、カナダで安楽死が合法化されたところ、一年で2000人近くがみずからの意思で命を絶っていて、キリスト教会はそれらの人びとの葬儀を行わないと言っているという話を聞き、選択の自由があってすばらしいと思うか、世も末だと思うか、他人のやることな…
キングゲイナーっていうアニメに「この毛長牛の肉は冷凍5年ものだな?」って言って値切るシーンがあって、キングゲイナーというアニメについて私はほとんどそれしか覚えていないんだけど、そのシーンはとても好きで、スーパーで買い物した肉を冷凍庫にしま…
出かけるなら荷物は少ないほどいいに決まってる。外を歩いていて、荷物がじゃまだなあと思うことほど気分の盛り下がることはない。地面に置いてかばんが汚れるのもいやだし、ベンチに置いて忘れたり盗まれたりする心配をしなくちゃいけないのもいやだ。とに…
引きこもりなのにアウトドア用品が好きで、アマゾンでいろいろ見つけては買ってしまう。まあ、アニメのDVDやPCパーツに何万円も注ぎ込むよりは健康的かなあなんて思いながらあれこれ。 それで、中古のバイクを去年買ったのに全然乗っていなくてもったいない…
サイリウムに触ったのは初めてだった。プラスチック容器の中の芯をポキっと折ると、サッと光り出す。もっと時間が掛かるものだと思っていた。その変化は鮮やかで、それでいて光は淡く、美しかった。21世紀のアイテムだと感じた。 でも、そうやってせっかく用…