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ユワイア

日記

湯WIRE14 ‐春‐

http://tweetvite.com/event/uwire14spring

 

 綱島というのは日吉の近くにあり、埼玉からは思っていたより遠いところで、行きようによっては2時間近くかかる。私はそんなに遠くまで何をしに行こうというのだろう。私はだいたい、クラブ・ミュージックがとくだん好きというわけでも、ましてクラブ・イベントの常連というわけでもないのだ。もちろん、実際聞いているぶんには悪いとも思わないけれども、しかし、2時間もかけてまで聞きに行くべきようなものだろうか。

 秋葉原のMOGRAというクラブ・ハウスで、NoNoWIREという、今度と同じ主催の催しがあって、それに行ったことがある。悪くなかったが、とても狭いところで落ち着く場所がなく、飲みもののコップを傾けるのにも苦労するほどお客が多いので、秋葉原だからいいようなものの、あそこへ2時間かけて行きたいかと言われればあまり行きたくない。

 綱島まで行く気になったのは、NoNoWIREより気楽だという宣伝を読んだからというのもあるし、なにより天気が良かったからだ。よく晴れていて暖かいし、風もないし、言うことなしだった。私は雨も好きだけど、風が強いのはよくない。とくに春は風の強い日が多くて、花粉は飛ぶし、桜は散らすし、部屋が土ぼこりだらけになるので窓も開けられない。私は風の谷には住めそうもない。

 だから、風がないのは特によかった。この綱島温泉というのは、駅のすぐそばにあり、とてもモダンで美しい建物だった。私はここが一目で気に入ってしまった。こんな余裕のある建物が、どうして今日まで現役で残っていられるんだろう。こういう建物の施設は、老朽化とか、経営が悪いとかで取り壊されて、目に入るだけでうんざりするような、ただ新しいだけの薄っぺらな生白い建物が建つのが、今どきというものなのではないのだろうか。

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綱島ラジウム温泉・東京園

 

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 明るくて、古く雑然とした感じで、座ってくつろげる椅子や座敷がたくさんあり、将棋の台があり、中庭もあり、桜の木が植えてあった。まるで昭和博物館に見学に来たかような気分だった。風呂は温泉といっても銭湯という感じで、天井は高くて明るい。何も置いてないので、石鹸やシャンプーはみんな自分で持ってくる必要があった。

 

 イベントは2階の宴会場で開かれていた。フロアならぬ風呂屋で、クラブ・ミュージックに気軽に親しむ会。1階には年寄りや家族連れがいて、その頭の上では最新の音楽とオタク・コンテンツで引き合わさった私たちがドンツクドンツクやっていた。どういう都合の重なり合わせでもってこんな空間が生み出されたんだろう。なぜ私はこんな昼間に、こんなところにいるんだろう。宴会場の窓から、道路をはさんだところにアパートが見える。あのアパートの部屋には人がいるんだろうか。あのアパートの部屋の人は、今この道路向かいの黄色い建物のなかでこんな催しをやっていることなんて夢にも思っていないんだろう。1階のマッサージ・チェアに寝そべっていたお爺さんは、今この天井の上で開かれている催しについて、たとえ説明されても理解することはきっとできないだろう。ほとんど同じ場所にいながら、私とお爺さんとアパートの人はまったく別世界の時間を過ごしてるといえた。あの宴会場でのドンツクは、まったく今どきの楽しみだったけれど、どこか昭和的でもあった気がする。部屋でインターネットを見て過ごす自分と、マッサージ・チェアに寝そべって過ごす、30年か40年後の自分と、ビールを飲んで、クマのぬいぐるみとレスリングをやる酔っぱらいを横目に見ながら、クラブ・ミュージックを聴いている自分とでは、どれがいちばん有意義といえるだろうか。

 少なくとも言えるのは、私が階下のお爺さんと同じ年まで生きていたとしても、そのころにはここのような、余裕といい加減さのある建物施設はいよいよなくなって、天井の上で、若い連中が最新の音楽で楽しむ音を遠い耳に聞きながら、マッサージ・チェアに寝そべって週末の昼を過ごせる日は来ないだろうということだ。

 

 そんなことを思っているうちにビールはなくなり、音楽も止み、宴会は終わった。もっと早い時間から来ればよかったと思う。

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  この温泉場の近くには鶴見川という川が流れていて、アイマスの映画に登場した場所があると聞いていたのに、見に行くのをすっかり忘れていた。しかし、ただ川を見るために、また2時間もかけてあそこまで行きたいかといわれれば……湯WIRE14-秋-のついでになら、行かないでもない。