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ドラマは心の中に

THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD2014』2/22(土)
http://idolmaster.jp/event/event2014.php



 私は明らかに予習不足だった。半分は知らない曲だった。シンデレラガールズミリオンライブの子たちも、ほぼ見分けがつかなかった。始まってしばらくは「あっ映画で見たやつだ」と、黒い衣装のバックダンサーさんたちをミリオンライブだと勘違いしていた。
 

 『つなぐ』というテーマについて、いまさら特別になにか思うことはなかった。ずっと前から散々言われていることだし、むしろ今は、いつまでもったいぶってるんだ、彼女たちのことをもっと知りたいから早く前に出てきてくれという気持ちがある。いわゆる9.18でのあの大人げない大騒ぎが向こうはよほど堪えているのか、このごろは少し慎重すぎるような気がしてじれったい。いつ泣き出すかわからない赤ん坊を相手にしている若い父親を見るかのような、不思議な印象を受けるコンサートだった。赤ん坊というのは、もちろん私たちのことだ。


 どうにかこうにか、3つにわかれたアイマスがひとつに混ざり合おうとしているかのようだった。つなぐというよりもむしろ、横浜アリーナでの『いっしょ』というテーマが今になってしっくり来るように感じられた。ラストソングに、劇場版のメインテーマで、クライマックスを飾るのにぴったりだったはずのM@STERPIECEではなく、わざわざライブのための新曲を用意していたのも、劇場版にシンデレラガールズが出ていないことへの配慮からだろうとわかった。ライブ全体に、そういう配慮があったと思うけれど、配慮のしすぎでちょっと冗長に感じるところもあった。締めでの社長とバネPの長説教とかね。
 5時間近く、とにかくろくにおしゃべりをする暇もないという感じで、怒涛のように歌いっぱなしだった。サイリウムを振るまわりの人たちも次から次へと色を変えるのが忙しそうで、ちゃんとステージを見て楽しめてるのかなあと、手ぶらの自分は余計な心配をしていた。


 あの子がソロで歌い、あの子とあの子があの曲を歌うことには、なにか意味があり、ドラマがあるのだ。雪歩役の浅倉さんが『ALRIGHT』の冒頭でイエーイ!と叫ぶのも、アニマスを知らない人には伝わらないドラマだ。なんの前触れもなくジュピターの『Alice or Guilty』が流れだした時は、私は驚いて鳥肌が立ってしまった。沼倉さんらによって披露されたその歌は、ジュピターのこれまでの道のりを知っている私にとっては素晴らしくドラマチックな出来事だったけれど、アイマス2をプレイしていない人にとっては、あるいはプレイしていても、女性が歌うには音域が低くて難しい曲だなあくらいにしか思わなかったかもしれない。同じように、ミリオンライブをプレイし、シンデレラガールズのドラマCDを聴きこんでいる人たちにとっては、ほとんどストイックといえるほど歌三昧だったステージの中に、いくつものドラマを見出していたに違いない。ドラマを生み出すのは、それを見る人の心そのものだ。私は単純に新しい歌を楽しんでいたが、そこに加えてアイドルマスターの新しいドラマを感じ取ることのできた人たちにとっては、どれほど幸せな時間だったろうかと思う。


 ステージは近くで見られて、とても迫力があった。なにしろ正面の最前から2列目だった。私はアイマスVISAのスーパープロデューサーシートに当選したスーパーラッキー野郎の一人だった。私はアイマスに関してだけは、本当に運に恵まれているとつくづく思う。モニターを通さなくても、表情や、衣装の質感や、ダンサーの手足の見事な筋肉までじかに見ることができた。終わりの挨拶で、下田麻美さんと今井麻美さんがたしかに私に手を振ってくれたのに、私は棒立ちのまま間抜け面を返すことしかできなかったのが、今になってとても悔やまれる。向こうは気を悪くしただろうか、それとも1秒後には忘れてしまっただろうか。暗闇にサイリウムの光がまばたく宇宙空間のような会場のなかで、私は月か太陽のように彼女たちを見上げていたけれど、彼女たちには私たちの区別はつかず、ひとつの星空のように見えていただろう。一番後ろまで見えているから何だってんだと思ったけれど、ほとんど一番前にいる自分が言えるようなことでもない。一番後ろの席にいた人は、春香が、中村さんがああいうのを聞いて、どんな気持ちがしたんだろうかと思う。同じ場所にいて、同じ時間を共有しながら、みんなそれぞれまったく違う体験をして、まったく違うことを感じながら、同じやり方で声援を送っているということが、前と同じで、とても不思議なことのように感じられた。ステージ上の彼女たちは本当に一生懸命で、アイドルマスターのアイドルそのもののようだった。


 アイドルマスターのアイドルというのは、私にとっては、3DCGで滑らかに踊る女の子が原点であり、今も変わらずその中心であり続けている。本田未央ちゃんや矢吹可奈ちゃんがいくらかわいくたって、私にとってはジュピターや876の3人組のほうが「本物の」アイマスだという思いがある。
 だから、発表された今後の新展開に、シンデレラガールズやミリオンスターズが、春香と同じ3DCGになって一緒に踊る日が来るような気配が感じられなかったのは少し、いやとても残念だった。つなぐというテーマならなおさらだ。ワンフォーオールはとても楽しみにしているけれど、シャイニーフェスタに続いて2作連続で「つなぎ」の匂いを感じているのも本当のところだ。ただ、それもこれも、PS4なりなんなりでの、正真正銘の次回作のために、今は私たちという、世話のかかる赤ん坊のご機嫌を見ながら、力を溜めているところなのだということを、私はまだ疑っていない。


あそこはまだドームではないのだ。