シンエヴァ

 ひとつだけ、こうしてほしかったというのがあるとすれば、あのラストシーン、とてもハッピーエンドではあったんだけれど、私はあの駅の階段をシンジくんがひとりで登っていってほしかったと思う。

 手をつないで一緒に歩いていける他者がいるということそれ自体、シンジくんの大人の証であるということもわかるし、人は一人では生きられないということはずっと根底のテーマであったと思うから、そのエンディングとして美しい収まりであることはとても感じた。

 そういえば新世紀エヴァンゲリオンの第1話はシンジくんが第3新東京市のモノレール駅に一人で降り立つところから始まったんじゃなかったっけ。なんて美しい対比なんだとますます思う。

 そう思うけれど、しかしやはり最後はひとりでいてほしかった。碇シンジくんというのは私たちにとっては、私にとっては20数年前からずっと孤独なこころを共有するイマジナリーな分身であり、友人だった。その彼が、美人で明るくて胸の大きな魅力的な人と階段を駆け上がり、画面の外に、アニメの外に消えていく。私ひとりをホームのベンチにとり残して。

 エヴァは、しかしそういう人間にも道を示してくれるのではないかという期待がずっとあったと思う。ひとりで生きていかざるを得ない人間に対しても、心強さのヒントを与えてくれるという希望。シンジくんだけでなく、エヴァの登場人物はみんな孤独を抱え、それを私たちに吐露してくれていたから。

 だからシンジくんに、それを示してほしかったのだと思う。 いろんな人と関わっても、最後はひとりで、どれほど頼りなくても自分の足で、自分の意志で、階段を登って、別の世界へ、未来へ、あるいは現実へ、前へ、進んでいく。それができるところを見せてほしかった。シンジくんにそれができるのなら、自分にもそれができるのかもしれないと思えただろうから。しかしそうはならなかった。彼はひとりではなかった。おめでとうとしか言いようがない。

 

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 彼という自分のいない世界をこれからひとりで生きていかなければいけないのかと思うと気が重くなる。寂しいね。